No.19 16 May , 2005
中学生の天文分野理解度は? 必見!市川先生のアンケート調査結果報告
 仙台市科学館の市川仁先生から、中学生の宇宙に対する理解度とその変化を探るべく実施したアンケート結果について報告を頂きました!
 Ms. Takataからのロンドン便りも届いています。連載なるか!? 
生徒は宇宙をどう認識しているか−アンケートに見る生徒の宇宙観−
仙台市科学館  市川 仁

 天体,宇宙に関する分野は,中学生にとって理解しにくい分野だといわれることが多い。そういったこともあってか,平成14年度からの新学習指導要領では,天文分野の内容を減じさらに従来中1で扱っていたが中3で扱うことに変更となった。仙台市内の全中学校では,1年時に仙台市天文台において天文台学習を行い,プラネタリウムを利用して天球と日周・年周運動等の学習をしているが,このような状況にあって,果たして生徒の天文分野の理解は深まっていってるのであろうか。天文台学習の後の時点と,その約2年後の中3の秋の時点で,生徒の宇宙に対する理解はどのようなもので,どう変わっていったかをアンケートを行い実体を探ろうと試みた。

1 はじめに
 天文分野がなかなか理解しにくい理由は,視点の移動(中と外,主観と客観)と3次元的な空間認識が必要なところにあるといわれる。しかし宇宙に対する興味関心はというと,逆にかなり高い方である。興味があるならもっと理解できてもよいはずなのに,なぜ「わからない」分野となってしまっているのだろうか。わからないなら,生徒はどのように宇宙を理解しているのだろうか。この分野の指導の改善点を探るために,生徒に記述式のアンケートを実施した。

2 アンケートについて
 ほとんどの項目について,記述式で回答させている。回答欄に図で記入してもよい。記述された回答を,こちらで分類して集計した。
なお,アンケート実施時の生徒の状況は以下の通りである。
 ■1回目調査 ・生徒数163名
        ・実施 中1の12月
        ・天文台学習を10月に実施済み
 ■2回目調査 ・生徒数162名
  ・実施 1回目から1年10か月後
         (中3の10月,一部のクラスが天体の単元に2時間入っている。)

3 アンケート結果

(1)地球は動いていますか。動いているなら,どのような動きをしていますか。

自転や公転という用語は中1からかなり定着している。中3になると自転+公転が増える。中3の「その他」には,「反時計回りに回っている」が6人いた。中1で「知らない・無回答」が4人いたが,中3でも3人とほとんど変わっていない。

(2)月は動いていますか。動いているなら,どのような動きをしていますか。

 中1では「知らない」と「動いていない」が1/5ずついたが,中3では「動いていない」がほぼ同数,「知らない」の減った分が「地球の周りを公転」の増加分となっている。「上下・東西」は,実際に観察したときの動きそのままを書いていると思われる。「太陽の周りを回る」が中3でやや増加している。

(3)太陽は動いていますか。動いているなら,どのような動きをしていますか。

 中1で見られた「地球の周りを公転」と「知らない」が中3で減り,「動いていない」が増えているのは,地動説を理解している生徒が増えたことになる。上の月の関する問いに比べると, 正しい理解をしている生徒が多いことがうかがえる。

(4)昼と夜はどのようにして起きるのですか。

 中1でも半数以上が正しく理解している。「太陽が沈むから」という直感的回答が14%いる。実体験が原理には結びついていない様子がうかがえるが,中3では「知らない」とともに減少している。説明になっていないものに,「月や太陽は地球より速く動いているから」「月が日本付近に来ると夜,太陽が来ると昼」「昼は地球が太陽を通り,夜は月を通るから」というものがあり,直感的なところからうまく説明できないでいる。

(5)太陽系の図の中から,地球,月,太陽を1つずつ選びなさい。

 木星と土星のみ記号化して表し,あとはすべて同じ大きさの小円で表されているのでわかりにくかったようである。中1では約1/3が地球が中心と考えているが,中3になると過半数が太陽が中心で地球の位置も正しく答えている。太陽に比べ地球と月の位置の理解が足りないのは,水星と金星の存在を知らないからだと考える。

(6)右の図で,なぜ地球が平らに見えるのですか。

中1では1/5,中3でも1/3しか正答はいない。中3になると「本当は平ら」「目の錯覚」は減少するが,その分「重力があるから」が増加する。地球は丸い→丸い表面に世界がある→地球の反対側の人が立っていられるのは重力があるから。という理解から,重力という不思議な作用が地球を平らに見せている原因でもあると考えたということだろうか。

4 考察
 @中1では,天文台学習をしたあとでも天動説の生徒が1/3程度いることから,生徒の持っている宇宙に対する直感的なイメージは非常に強固なものであり,変わりにくいものであることがわかった。

A中3になると,授業で扱う以前であっても宇宙に対する理解はかなり深まる。アンケート時点で5クラス中2クラスが天体の単元に2時間入っていた。その内容は,天球の概念と地球の自転・公転であるが,授業をしたクラスの正答が格段と増加しているわけではなく,授業の有無に依らず全体として向上していた。

B太陽が中心,地球が太陽の周りを公転ということは理解しているが,「月」はどこにあるのか理解していない。その理由は,太陽は空を動いている(日周運動)→でも実は,太陽の周りを地球の方が動いているんだ,と教わった→月も太陽と同じように動いている。小学校で学習した→じゃあ,月と太陽はどっちが中心なの? と,ここで思考が止まっているからではないだろうか。小4で,月の日周運動は観察させている。しかし現在の教科書では,月の満ち欠けの理由も扱わず,「月は地球の衛星」と当たり前のよう小さく出ているだけなのである。生徒は「動いて見える太陽が止まっているなら,月も止まっているのだろうか,自分で動きを観察したのに」と悩んでいるのではないだろうか。地動説をしっかり定着させるには,月をしっかり学習する必要がある。
 C丸い地球と平らな地面は別のものととらえている。地面,地平線を平面で表すことを理解していないと,天球の理解に進めない。ここでも強固な直感的イメージを持ち続けていることが分かる。

5 今後に向けて
 中途半端な月の学習が地動説の混乱を招いているのなら,月と太陽の動きの違いを見せたらいいのではないだろうか。日食は月が太陽の前面を移動していくことが分かる現象である。太陽を固定して連続して見ていくと,月が太陽の前を西から東に動いていくのが分かる。月と太陽は日周運動の速さが違うことが分かるのである。
 国立天文台に事務局を置く,公開天文台ネットワーク(PAONET)にこのことを指導できる学習指導案と日食・月食のパワーポイントデータを登録してある。教育現場におられる先生で,このことに興味を持たれた方,データをダウンロードして生徒に指導してみてはいただけないだろうか。
 PAONET http://www.nao.ac.jp/paonet/index.html
  →PAONET資源を活用した学習指導案→条件検索→学年に「中学3年」を選択し検索開始
  →20件ほど指導案が出てくる。その中にある「日食と月食」です。
 このアンケートについてと日食と月食のパワーポイントについての,ご意見,ご感想をお寄せください。
  

までよろしくお願いします!

ロンドン便り 第一弾          ロンドンカレッジ大学 高田淑子   

 EGU会場 ウィーン国際会議場全景

 EGU(European Geosciences Union:欧州地球科学連合) 講演会に参加しました。
 毎年春に、ヨーロッパ全域の地球科学関連の科学者や教育者が集い、成果研究発表を行う場で、今年は、2005年4月25日−29日、オーストリア、ウイーン郊外の国際会議場で行われました。後半の2日間のみですが参加しましたので、会議の様子をご報告します。
 これは、日本でいう地球惑星科学関連学会合同大会(今年度は、5月22―26日、幕張メッセにて行われます)や、アメリカのAGU(American Geophysical Union:米国地球物理連合)の春と秋の講演会のヨーロッパ版で、地球科学全域のセッションが多数同時並行で進行しています。天文分野はこの学会には含まれませんが、惑星科学の分野では欧州で一番大きい学会のようです(これも日米と同じ)。ガリレオの時代では惑星科学は天文の領域でしたが、今は、地球科学と同様の手法で調査できる時代であるということでしょうか。
 この講演会の中では、地球科学の教育セッションもほとんど全日にわたり開催され、活発な意見交換がなされていました。遠隔授業(衛星―教室、南アフリカ−北米等)の報告もいくつかありました。特に、惑星科学のアウトリーチでは、ESA(European Space Agency:ヨーロッパのNASAのような機関)が打ち上げた惑星探査で得られた画像データの配布等の話題もありました。以下に、英語ですが、授業でも利用できそうな映像・画像が掲載されているサイトをご紹介します。
 ESAのホームページ http://www.esa.int/esaCP/index.html
 その中でも、火星探査機 マースイクスプレスのHP(データアーカイブもできます。)
       http://www.esa.int/SPECIALS/Mars_Express/
 また、土星やタイタンの探査機 カッシーニ・ホイヘンスのHP
    http://www.esa.int/SPECIALS/Cassini-Huygens/index.html
 子供向けプログラム
    http://www.esa.int/esaKIDSen/
これが日本版になるとこうなります。宇宙航空研究開発機構の子供向けページ
    http://iss.sfo.jaxa.jp/kids/

EGUのホームページ http://www.copernicus.org/EGU/EGU.html

第9回IAUアジア太平洋地域会議(ARPIM2005)2005年7月26〜29日
  於インドネシア・バリ島「天文教育・普及」関連プログラムのお知らせ


 2005年7月26〜29日にインドネシアのバリ島で、アジア太平洋地域会議(APRIM)http://www.as.itb.ac.id/APRIM2005/が開かれます。この会議では、当該地域で天文学研究・教育に従事する方が集まり、さまざまな分野における研究発表および報告がなされます。天文教育・普及セッションも7月28日(3日目)と29日(4日目)午後に予定されています。アマチュアや高校関係者の出席を奨励するため、このセッションのみに参加される方は通常250米ドルの登録料が免除となります。

 会議では口頭発表に加えてポスターセッションも開かれ、その内容は、NASAで2005年1月に打ち上げられたDeepImpact探査機が送り出す衝突体が、7月4日にTemple1彗星に衝突(impact)する様子を東アジア各地で観測し、その結果を報告するというDeep impact報告会の他、教育・普及実践プログラムの紹介、各国の天文教育事情、高校生の交流会、地元の高校視察などを含む盛りだくさんのものになっています。参加されてみてはいかがでしょうか?

 会議の趣旨・内容・申し込み方法についての詳細は次のページをご参照ください。
第9回IAUアジア太平洋地域会議(ARPIM2005)「天文教育・普及」関連プログラムについて

 申し込みの〆切は会議のホームページhttp://www.as.itb.ac.id/APRIM2005/から直接行う場合は2005年5月29日まで、国内申し込み取りまとめアドレス ( ) に必要事項を書いて送る場合は2005年5月22日までとなっています。                 

 また、高校生および引率教諭への旅費援助プログラムも用意されています。ご興味のある方は以下のリンクをご覧ください。
                                   応募要項へ  


連絡先:宮教大インターネット天文台事務局 三澤宇希子(メールフォームへ
今までの活用事例を、星空観察ネットの広場で紹介しています。是非ご覧ください。